1番好きなお笑いコンビが解散してしまいました(犬の心の話)
1番好きなお笑いコンビが解散しました。
「犬さん」こと、犬の心というコンビです。
最初に私が犬さんを知ったのは、確か2010年頃で、高校生のとき。
当時いろんなテレビ番組に出始めていたピースさんがきっかけでお笑いが気になるようになって、
某動画サイトで東京吉本の芸人さんの動画を探索していたときに、たまたま見つけて。
とにかく、動画でアップされていたコントが、変だった。
私は東京吉本の芸人さんにハマる前に鳥居みゆきさんのファンでもあったので、
ふつうでないコントは見慣れていたはずなのに、それでも犬さんは、変でした。
当時はとにかく ”シュール”と言われていたけれど、空想の力で成り立っているコントが多くて、そこにワクワクしました。刑事のコントの「俺、チャーシュー麺!」「ワンパクなやつめー。」とか、大好きなくだりが沢山あります。
それから当時のその動画サイトでは、ファンが作ったMADと呼ばれる動画が流行っていて、その存在も大きかったと思います。
表に見える面白さだけじゃなくて、無限大ホールや神保町花月で日夜ライブに出ている若手芸人さんたちの、物語みたいなものにも惹かれていきました。
高校生のころはライブにも行けなかったので、ネットで過去の動画や、ファンの方が書いたライブレポを隅から隅まで見ているような日々でした。過去の単独ライブやお芝居のレポートを読んでは、それに自分が間に合わなかったことが悔しくて、早く早く、ライブに行けるようになりたくて。
そして、大学生。高校生の頃からのお笑い熱のまま、週に何本もライブに通う毎日がスタートします。
多分最初に犬さんを観たのは、神保町花月でのお芝居「春夏秋冬」。
それから本当に、本当に沢山のライブを観ました。
新ネタライブで観たことがないコントを観る度に、ワクワクして。
そのあと他のライブでちょっと変化が加えられたそのコントを観ると、またワクワクして。
今はもう無い浅草花月でのヘンテコなライブも、めちゃくちゃ楽しかったな。
「犬の心についてじっくり考える60分」とか、最高だった。
世代的に間に合わなかったと思っていた、憧れの存在・東京シュール5が復活して、モリエールでやったライブを観られたときも、嬉しかった。
そこで池谷さんが、「自分の未来のことは既に全部決まってると思っている」というお話をされていて、驚いたことも覚えています。
こういう、自分には無い、自分の身の周りにも無い発想とか考えとか偶然とかに出会えるから、お笑いライブに通うのがやめられなったんだと思います。
元カナリアの安達さんがやられていたマンツーマンのトークライブでは、池谷さんのゲスト回で「押見さんはずっと中学生だから」というお話をしていて、そのすぐあとの押見さんゲスト回で押見さんが自己分析をされているときに客席からのクスクス笑いが止まらなかったりだとか、多分この記事では全然伝わらない、ライブでしか味わえない、些細なことが、とにかく楽しかったんです。
「できる7人」も毎回最高でした。DVDを残してくれて、本当にありがとうございます。
沢山行ったライブの中でも、特に記憶に残っているのが、「本気ライブ」の最終回。キングオブコント2014の決勝進出者発表の直前のライブで、それまでの定期ライブで披露してきたコントを、衣装チェンジまで舞台上で見せたままぶっ続けでやった後に、作家のゴージャス村上さんも出てきたエンディングで、「とにかく決勝に行きたい」と汗だくの状態で話すお2人の姿は、忘れられないなと思います。ライブは、事件を目撃しちゃうことだなと、改めてそこで感じました。
神保町花月の本公演でのお2人のお芝居も、大好きでした。当時は定期的に犬さんの出演作があって、その度に通っていました。家城さん作の「いろはにポエと」とか「ナツテール」とか「リズム&ライス」とか。オコチャさん作の「西遊記物語」とか、劇場7周年記念の「生武運」とか。
KOC決勝進出が決まってからの公演だった「任侠デイドリーム」は、押見さん演じる脚本家と池谷さん演じるヤクザの関係性が実際の犬さんと重なって見えて、勝手にぐっときたりして。
そして、キングオブコント2014。電車の中でスマホを観ていて、決勝進出者の中に名前を見つけたときは、震えました。発表の様子が映るかもしれない翌朝のニュース番組は、全部録画して。夢みたいな気分でした。
犬さんの決勝進出が発表されたとき、周りにいる芸人さんたちがもう、すっごく喜んで、拍手して、お祝いしていて。Twitterもお祭り状態で。ライブを観ているときも思っていたけれど、本当に芸人さんたちに愛されているコンビなんだなあと思って、そのことも嬉しかったです。
決勝の放送のときも、自分のことのようにずっとドキドキしていて。
1戦目の点数発表のとき、大体はこうネガテイブというか、トークとかでも自分を下げることの多かった押見さんの全身から、自信がピカピカと出ているような気がして、もうそれだけで、十分なくらいでした。
「2月犬」「冬犬」「梅雨犬」「2015犬」「新宿ひと吠え」「まわる犬」、60分コント…
犬さんの単独ライブは、公演中に大いに笑って、会場から出たときには、すっと背筋が伸びる気がしていました。帰り道にはエモい曲が聴きたくなって、大体はフジファブリックの「星降る夜になったら」か、RADWIMPSの「君と羊と青」をウォークマンでかけていました。
それから覚えているのが、キングオブコント決勝後の単独だった「冬犬」の、OPとED。OPにくるりの「ふたつの世界」EDにnever young beachの「明るい未来」が流れたんです。”交わらない ふたつの世界” で始まって、"明るい未来の話し" で終わるのが、すごく犬さんらしいなと、勝手に思っていました。
結成20年を記念して各地をまわった「まわる犬」のときは、沼津までプチ遠征もしました。寒い雨の日だったけど、1人で港の方に行って海鮮丼を食べてからライブを観たのも、良い思い出です。
ライブレポを読み込んでいた頃に憧れていたオールナイトのトークライブをやってくださったことも、嬉しかった。「できる7人」でおなじみのグランジさんとライスさんに囲まれて、途中で家城さんまで登場して、最後には犬さん2人で「硝子の少年」を歌って。
1人きりの朝帰り、幸福すぎたライブの記憶で頭がいっぱいで、さらに確かカバンには多和田葉子さんとかの本が何冊か入っていて。早朝の人気のない新宿を歩いていたらナンパだかキャッチだかの派手な人に声を掛けられたけれど、気持ちが最強状態だったから、何も怖くなかった。
私が最後に犬さんお2人でのコントを観られたのは、コロナ禍が始まるずっと前、去年の11月に無限大で開催された、「期待の若手芸人が今年つくったベストネタ VS 先輩芸人が“このライブに出演する若手芸人と同じ芸歴”のときにやっていたネタ」というライブです。
”先輩芸人”側である犬さんのネタは、私が高校生の頃、某動画サイトで観てゾッコンになった、あの刑事のコントでした。
明転してすぐに何のネタかが分かったお客さんのざわめきが周りから聞こえきて、ああ、私と同じようにあの頃からずっと犬さんを、この世代の芸人さんを好きでいるひとが確かにいるんだなと思って、ぐっときてしまって。
動画で観ていたときは、”ヘンテコな若手刑事2人”だったのが、”ヘンテコなおじさん刑事2人”になっていて、さらに面白くなっていて。歳をとってからコントをやるのも楽しみだと、シティボーイズさんみたいになりたいと以前語っていた押見さんの言葉を思い出します。
この記事を書いているうちに昨日になってしまった、2020年6月22日、犬の心が解散しました。
寂しくて寂しくて、お2人でのコントや単独ライブが観られなくなることが悲しくて、シティボーイズさんみたいになりたいって言ってたじゃんと、コンビを続けることであのカリカさんに勝てそうだったんじゃないかと、泣けてきたけれど、
でも、もう、キングオブコントのときみたいに後輩芸人の方からいじられまくっているTwitterと、そして押見さんのYouTube動画を観たら、結局笑っちゃうんですよね……
ずるい。そして優しい。
解散を発表する前の押見さんの目の一瞬のギラつき、めちゃくちゃ笑わせられたトークライブで何度か見たことあるやつだ…と思いました。
それからもう、解散理由のトークがさ、やられました。蛇じゃあ、しょうがない。
片やお父さんが大きな蛇に食べられそうで、片やお母さんがカンガルーのポッケに入っているなんて、もうめちゃくちゃに 犬の心 だ。
Twitterで池谷さんも蛇のトークに乗っかっていて、それも嬉しかった。
もう何年もずっと大好きな、ヘンテコな犬の心さんだ。
YouTubeの登録者数が1000人を超えたら池谷さんを呼ぶことにしていたのに解散に間に合わないなんて、もう、らしすぎるじゃん、と。
こんな形になるなんて思っていなかったけれど、多分これからも、犬の心さんを好きでいても、大丈夫そうだと思えました。
YouTube「犬の心Ch」あらため「押見Ch」出てもらうからな。
— 押見泰憲 (@nijyuban) 2020年6月22日
これはもう絶対だから頼むぞ。
ギャラは出ないけどお菓子くらいは出すから https://t.co/aj6rStxsvr
まあ蛇と親父の具合かな。行けたら行きますわー。
— 犬の心いけや (@ikeyakenji) 2020年6月22日
芸人さんの話をするとき、世代のことを考えると、正直しんどくなることも多いです。
でもキングオブコント決勝進出のときや今回の解散の知らせでも、色んな芸人さんたちにいじられている犬さんはどうしてもかっこよくて、それは無限大ホールや神保町花月や浅草花月やルミネや大宮ラクーンとかでの22年と半年があったからで、これからのお2人からもその22年と半年が抜け落ちることは無いはずで。
特別仲良し〜というアピールをするコンビではなく、でもコントやトークやMCで2人が一緒になると、やっぱりどうしようもなくしっくりくる、犬の心というコンビが、大好きです。
犬さんのファンになったことで本当に沢山のものを見ることができて、楽しい時間が格段に増えました。
悔しいしまだまだお2人の脳みそやあれやこれやに期待していたいので、ワガママですが「お疲れ様でした」は言いたくないです。
今はひとまず、池谷さんの蛇退治を心から応援しつつ、犬の心を好きなまま、すぐに切り替えられるかは分からないけれど、「星降る夜になったら」と「君と羊と青」を大音量で聴いて感傷を振り切って
お2人のこれからを楽しみにしていようと思います。